6月に山開きを迎える“九州の屋根”。
雄大な1700メートル級の山々が連なる
九重連山に見守られた飯田高原は、
山を愛し、自然に魅せられた人すべてのふるさと。
鮮やかなミヤマキリシマが咲き誇る今、
麓の高原では食や芸術といった
新しい文化も活気づき始めている。
 
文/重村直美 Text:Naomi Shigemura
撮影/三笘正勝 Photo:Masakatsu Mitoma
絵/浜竹睦子 Illustration:Mutsuko Hamatake
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 布院方面から阿蘇方面へ、高速バスで林の間を縫うように走っていくと、やがて目前に壮大な草原が広がる。飯田高原だ。道路の左右は一面、力強く伸びるススキの群生。まだ青い草の上を風が駆けていく光景のなんと清々しいことか!
 飯田高原は九州の屋根とも称される九重火山群のほぼ北側に広がっている。大船山、平治岳、黒岳、久住山、星生山、三股山など1500〜1700メートル級の山々へのルートは長者原や牧の戸峠の登山口から始まり、体力や経験に応じて誰もが思い思いに登山を楽しむことができる。毎年、6月の第一日曜日に行われる山開きに集まる登山愛好者は、実に2万人。山の尾根にはミヤマキリシマが咲き誇り、くじゅうの山々は今、1年でもっとも華やかな時を迎える。また麓でも「九重西鉄ホテル花山酔」をはじめ、山登りの拠点となる温泉宿も活気にあふれているシーズンだ。シーズンといえば、長者原ビジターセンター周辺のタデ原湿原には、ヒメユリ、ノハナショウブ、ハンカイソウ…高原の初夏は年間でいちばん花の多い季節。上をめざすだけでなく、じっくりと足元に咲く花々を愛でる時間も、くじゅう散策の醍醐味なのだ。

九重連山のもっとも東に位置し、豊かな原生林が残る黒岳。山頂・高塚の標高は1,587m。登山口の男池(おいけ)から山頂へは約3時間半のタフなコースだが、樹林の中を歩くので夏の山登りも爽快。時折、ユニークなフォルムの巨木とも遭遇する。(写真右)
 

 やかな風に草の匂いを感じる。初夏のくじゅうはとても過ごしやすい。秋になれば青々とした草原はやがて黄金色に輝き始める。
「でもね、冬の寒さはスゴイよ。事前に対策を練っておいても、水道管はすぐにカチカチ。雪も笑えるほど積もるしね」。そう苦笑しながらも、くじゅうの自然に魅せられ、冬の厳しささえも覚悟のうえで他の市や県からこの地に移り住み、独自のスタイルで飲食店や工房を営んでいる人々は多い。そして、彼らの視線からくじゅうをたどっていくと、この地域の魅力のひとつが自然とリンクした食であり、その食のシーンを築いている人であることに気がつく。土の質から改善し、無農薬や有機栽培に取り組む農家のグループ。自分たちの手で丹精込めてつくった野菜や乳製品の新鮮なおいしさを、手づくりの料理に込めて届けるお母さんたち。くじゅうの自然を敬い、時に厳しさと闘いながら自分たちが納得できる食材づくりに取り組んでいる。そんな意志ある生産者がいるから、この町を選んだ、この町で自分も頑張るという想いが会話の端々から伝わってくる。また、自然と向き合い、自身の創作活動に取り組む人々も増えており、昨年オープンした『榎木孝明美術館』の周辺には陶芸や草木染めなどの工房が集合。この一帯は『九州芸術の杜』として、今後も一芸に秀でた職人や作家の工房が完成する予定だという。
 古くから多くの登山者を受け入れてきたくじゅうの山々。その麓に広がる飯田高原では、食に、文化に、チャレンジャーたちの試みが地域の新たな活気となりつつある。高原を歩く楽しみもますます広がりそうだ。

 
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【2004年6月現在】
[福岡→九重]日田バス運行
●運賃

福岡(博多駅・天神)→くじゅう登山口(花山酔前)
片道3,100円(往復・ペア乗車券5,600円)
※座席指定制

●所要時間 2時間44分(天神〜くじゅう登山口間最速)
●運行本数 往路2便・復路1便
●ご予約 西鉄高速バス予約センター(8:00〜19:00)
TEL:092-734-2727
●お問い合わせ 西鉄テレホンセンター福岡
TEL:092-733-3333
http://www.nishitetsu.co.jp/bus/highway/ 

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