![]() |
![]() |
||||||||||||||
| 旅とアート鑑賞はどこか似ている。 感動や発見と出会いたいなら テキストに頼らず、好奇心を持って、 みずからアプローチを試みることだ。 芸術の秋、深し。 野外彫刻という のびやかなアートとともに歩む宇部へ。 感性と旅の嗅覚を鍛えに行こう。 |
|||||||||||||||
| 文/重村直美 Text:Naomi Shigemura 撮影/三笘正勝 Photo:Masakatsu Mitoma 絵/浜竹睦子 Illustration:Mutsuko Hamatake |
|||||||||||||||
|
------------------------------------------------------------------------------------
|
|||||||||||||||
| 宇部を歩けば、彫刻に出会う。市街地を貫くメインストリートで、水流豊かな川のほとりで、子どもたちが集まる学校や図書館、公園で。大小さまざまな作品が、人々の発見の声を待っているかのように、そっと佇んでいる。 小倉から高速バスで約1時間半。山口県南西部に広がる宇部市のキャッチフレーズは「緑と花と彫刻のまち」。戦後の焼け跡から石炭業をはじめとする産業で経済復興を遂げてきた街は、その一方で激しい大気汚染が問題に。市民の呼びかけによる緑化運動を発端に、街には花と緑がよみがえる。そんな時、小さな現象が起きた。宇部市公園課の職員が宇部新川駅前の池に小さな女性のセメント像を置いたところ、毎日のようにスケッチブックを持った子どもたちが集まったのだ。「これほどまでに子どもたちの目が吸い寄せられるのなら、本物の彫刻を見せてやりたい」。 こうして1961年、現在宇部市が2年に1度開催する全国規模の彫刻展「現代日本彫刻展」の前身である「宇部市野外彫刻展」が幕を開けた。「街に緑と花を、そして本物の芸術を」。それは、パブリック・アートという言葉が世の中に浸透するずっと以前に生まれた、街の願いだったのだ。 |
|||||||||||||||
野外彫刻は移り変わる自然や街という、環境とともに生きる存在だ。時間や天候により光の強さが変われば、そこにある彫刻の表情も変化する。街を行く人や車の量が変われば、そこに佇む彫刻の存在感もおのずと違うものになるだろう。空や緑、あるいは街中のビルや車が行き交う大通り…刻々と変化する風景の中にあるからこそ、野外彫刻はおもしろい。何となく気になる作品は、観る距離や角度を変えながら、時間をかけて自由なアプローチを試みてほしい。うれしいことに、街のメインストリートであるシンボルロードと真締川周辺に設置された作品にはライトアップが施され、昼間とはまた異なる顔で私たちを楽しませてくれる。 さて、彫刻散策の間の腹ごしらえには、瀬戸内海の幸を存分に味わおう。特に秋から冬にかけて旬を迎える車エビや『月待ちがに』と呼ばれる渡りがには、ぜひ賞味しておきたい特産品。夜になりもっとも賑わうのはJR宇部新川駅周辺だが、地元客に人気の良心店は市内各所に点在している。彫刻鑑賞を楽しみながら縦横無尽に街を歩きつつ、何となく入った店や偶然出会った人との語らいの時をかみしめる。物静かだが、味わい深い。実はこんな街がいちばん旅の嗅覚を鍛えてくれる。 |
|||||||||||||||
|
------------------------------------------------------------------------------------
|
|||||||||||||||
|
|||||||||||||||