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| 街のあちらこちらに、地下から湧き上がる豊かな水がある。 歴史と自然が息づく城下町・島原へ。 風情たっぷりの涼感や水の都を愛する人々と、ふれあい、うるおう、夏の旅。 |
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| 文/重村直美 Text:Naomi Shigemura 撮影/三笘正勝 Photo:Masakatsu Mitoma 絵/浜竹睦子 Illustration:Mutsuko Hamatake |
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| 強い日射しを遮る鮮やかな緑。チリンと響く風鈴の音。足元には打ち水、そしてどこからか耳に届く川のせせらぎ。
市街地の背後にそびえる緑豊かな眉山と雲仙山系の地下水が、街のあちこちに湧き出でる。島原は九州の中でも有数の水の都。猛暑の時期に訪れて肌に感じる涼感は、また格別である。 たとえばアーケードの中にあるひときわ古い門構えの『しまばら水屋敷』や、森岳商店街の『茶房&ギャラリー速魚川』。どちらの休憩処も、水が自噴する庭の泉を愛でるように家屋の戸窓はすべて開け放たれている。湧き出る水が描く水紋、魚がピチャリと跳ねる音、水に映る木々の色彩、水面を渡る風。エアコンで管理された快適さとはまったく異なる、水辺の光景がもたらす生き生きとした清涼感が、全身を通り過ぎてゆく。 「派手なものはいっさいありません。あるのは古き時代の香りとゆったりとした時の流れ」。しまばら水屋敷のご主人・石川さんは手書きのリーフレットにそう記していた。「何かが足りない」私たちはそう言ってよく嘆くけれど、いつもどこかが枯渇している心を、島原の水辺は豊かなうるおいで満たしてくれる。 |
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清らかな水は常に動いている。生きている証しだと言ってもいい。街もまた同じであるように思える。穏やかな城下町・島原も歴史ある面影を残しつつ、その一方では住民たちにより少しずつ独自の街づくりが進行中だ。 「いちばん大きなきっかけとなったのは、やはり普賢岳の災害です」と、水屋敷のご主人。抗えない自然の力を前に、一度は誰もが故郷を捨てなければならないという所まで追い詰められた。が、こんこんと湧き出る清水のごとく、絶望の中からやがて不屈の想いがひとつ、ふたつと湧き上がる。「昔のものを大切に、身の丈をわきまえながら、ゆっくりといい街にしていこう」。どん底から奮い立った人々の決意は、しなやかに強い。 特色ある街づくりへの取り組みは、昔の面影を残す街並みからもうかがえる。特に島原城近くの森岳商店街には江戸から明治、大正にかけての古い建築物が数多く現存している。猪原金物店や絃燈舎など、商店街に属する建築・建造物10軒は、今年文化庁の有形文化財として登録される予定だ。ひとつの小さなエリアでこれだけまとまった数の認定を受けるケースは、全国的にも極めて稀なことだという。 普賢岳災害から10年以上、知恵と工夫と地元への愛情を胸に、がまだす(がんばる)島原。日常の中に歴史がある。自然がある。そしてわが街の魅力とは何かを肌身に知る人々のエネルギーがある。生き続ける島原は、だから常にみずみずしい。 |
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