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| 自然を満喫し、交流や体験を楽しむグリーンツーリズム。 | ||||||
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| 農山村と都市の対等な交流。そこから新しい旅が生まれる。 | ||||||
九州では、こうしたグリーンツーリズムへの取り組みをいち早くスタートし、96年には「九州ツーリズムシンポジウム」が小国町で開催される。このとき、多くの参加者から「実践的ノウハウを学ぶ場がない」という悩みが寄せられた。それまでの施設中心型の観光とは違って、グリーンツーリズムでは農山村と都市が対等な関係で交流しながら、新しい旅の文化を創造していかなければならない。そのためにはグリーンツーリズムの歩みや思想を学びながら、実務能力も磨けるような学校が必要とされていた。そこで小国町では、農山村でのグリーンツーリズムの担い手やコーディネーターとなる人材を育てるとともに、全国の地域や研究者、グループと連携した情報発信センターをめざして、97年に九州ツーリズム大学を開校したのである。世界的な細菌学者として知られる北里柴三郎博士は、この小国町に生まれた。博士は人材の育成には「学習」と「交流」が大切であると唱え、1916年、青少年のために図書を寄贈して「北里文庫」を開館し、交流のための「貴賓館」を創設している。博士の思いを受け継いで、この町では住民主体の創造的な地域づくりに長年、取り組んできた。こうした過程で生まれた学習と交流の拠点「木魂館」をキャンパスにして、九州ツーリズム大学は運営されている。 「高原野菜の畑やジャージー牛の牧場、小国杉の森など、この町は広大な自然のフィールドに恵まれていますから、九州ツーリズム大学にふさわしい場所といえるのでは」と、江藤さんは胸を張る。さらに長年の地域づくりで培った地元の連帯感と確かなネットワーク、人を温かく受け入れる開放的な町民の気質も、グリーンツーリズムを実践するときには欠かせない要素だという。 そして97年9月、いよいよ1期生を迎えた。果たしてこんな山の中まで学びに来る人はいるのか。そんな心配をよそに大反響を呼び、定員40人のはずが、最終的には56人が「学生」として入学。地元の町民10人のほか、九州5県から会社員、公務員、マスコミ関係者、コンサルタント、農家、主婦などが集まった。なかには、東京から毎月通ってくる大学生もいたそうだ。年齢も20代から70代とさまざま。参加理由は「農家民宿を考えている」「農山村へ移住して新しいビジネスをしてみたい」「都市と農山村の橋渡しがしたいから」「新しい生き方を探している」と、まさに多彩だった。 |
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| 都市から田舎へ。風は吹きはじめているのか。 | ||||||
こうして日本で初めて、グリーンツーリズムのプロを養成する九州ツーリズム大学が開校した。そのカリキュラムは年々、深化・発展をつづけているが、とにかくユニークで面白い。たとえば、地域づくりの専門家やツーリズム研究者、環境教育などのそうそうたるメンバーを講師に迎える「実践課程」では、月に一度、2泊3日の合宿を7ヵ月間つづける(カリキュラム概要参照)。基礎的な講義のほか、マーケティング、農家民宿、農村レストラン・直売所運営などを、演習や実習、体験授業やワークショップを交えて実践的に学んでいく。「カリキュラムそのものが、グリーンツーリズム体験となるような仕組みです。また講義以外の楽しみが、学生同士のネットワークのひろがりですね」という江藤さん。卒業生のひとり、ムラの暮らしを紹介する雑誌『九州のムラ』の養父信夫編集長は「夜の交流会は門限なし。ふだんなら出会えない人と、いきなり深い話ができるんです。ビジネスを軸にした都会の異業種交流会と違い、本当にいろんな価値感の人が集まるから、自分がいかに狭い価値感で生きてきたかを実感させられます」と、その驚きと魅力を語ってくれた。先月、6期生を送り出し、九州ツーリズム大学から巣立った学生は合わせて約800人を数える。こうした九州の動きに刺激され、北海道や信州にも姉妹校が誕生。現在、東北や沖縄でも開校準備が進んでいるそうだ。 昨年までの卒業生707人のデータでは、農家民宿や農村レストランなどをはじめた人が10%、行政関係者が15%、コンサルタントや学生が10%となっている。さらに注目すべきことは、農山村への移住や定住を目的とした人が20%、自分探しや生きがい探しなど、小国町のまちづくりや町民との交流にヒントを求めて来た人が、なんと30%にも上っている。実際、都市からこの町に移り住む若者が3年程前から増えはじめ、すでに70人に達したという。 「たとえば年収一千万円で暮らしたい人は、都会で暮らせばいいでしょう。でも300万円でいいという人には、田舎暮らしを勧めます。人が少ないから、田舎には圧倒的にチャンスが多いし、自分を楽しむ方法もいっぱいあります。生きてることを実感するなら、田舎で元気に。これですよ」と、江藤さんは力強く締めくくった。ある調査によると、できれば田舎に移住したいと思う人が、首都圏だけで300万人もいるという。「定年帰農」に加えて「青年帰農」の流れが起きているともいう。これからは田舎が面白くなりそうだ。 |